2020年型 Vストローム 1050XT インプレッション




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コメントは下記のような男の視点で書いております。ご参考まで。

ライダースペック

身長175cm 体重70kg 股下人並み 握力左右50kg ’83年バイク免許取得 ’92年限定解除

近年のバイク

2017 Vstrom1000XT  2013 ハヤブサ 09R1200GS  07ロードキング 06スポーツスター BMW R1150GS   

メンテナンス度

オイル交換、ブレーキパッド・マフラー交換程度。

走り方

お散歩:空いた早朝の都心部や郊外の大きな道路を1〜2時間流す
ツ−リング:高速5割、下道5割の日帰りツーリング。峠は8割の気合で流す。



《乗り換えなくてもいい、そう思ったけれど》
前車Vストローム1000XT。ほぼ文句のないバイクだった。これまで乗ったバイクで一番峠を速く走れ、燃費はリッターバイクにして20q/L越え、乗車姿勢も楽。Vツインの鼓動は乗っていてハーレーほどではないけれど気持ち良いし、当面乗り続けていくバイクだろうなと思っていたのだが、パリダカだのファラオだのバハ1000だのと、二十歳前後に夢中になったラリー車のテイストがインスパイアされたデザインに、引き出しの奥にしまった銀行通帳が解き放たれた。

とは言えラリーにおけるスズキの立場はそう目立ったものではなく、ホンダやヤマハの独壇場で、正直伝統だの血統だのと言った売りはあまり無いのだが、いかんせんVスト1000の後継機種と言うことは、間違いなく今以上の走りや快適性を保証してくれるわけで、デザインに加えそうした魅力にも期待しての購入に至ったのである。

ちょっと気になることが二つ。一つ目は「かっこ良くなった」。そう思ったわけだが、巷のインプレを読むと「ニューレトロ」とか「古くて新しい」とか書かれている。私の思う「カッコ良さ」はもはや現在の「カッコいい」という指標からずれているようで、デザインの感性が古くなっていることを知った次第。じゃあ逆スラントタイプのカウルとか欧州の赤いバイクとかそういうのが今のデザイントレンドだとするならば、「俺は別にいいや」と。なんかエバンゲリオンに跨っているみたいで(個人的意見)。古いデザインを敢えてモチーフにしていると言うことは、CBシリーズやW800Z900RSと同じく、この後どんなデザインのバイクが出てこようと「これはこれ」という見方ができるということで、メリットになる。

写真を撮ってFBにアップしたら、ちょっとだけバイクを知っている友人二人から「KATANA(旧型)]を買ったのか?というコメントが来た。似てる??まあ、カッコいいバイクに雰囲気似ているならそれはそれで良いのだが。


二つ目はグリップヒーターが標準でないのか不思議。バイク雑誌とか散々褒めちぎっているくせにこの点、一切突っ込んでいないが、これだけの金額と装備具合を考えれば当然ついているだろうと思ってしまう人も少なくないだろう。しかし無いものはない(オプションではある)。スズキさんに何かこだわりがあるのか。ぜひ伺ってみたい。正直坂道で下がらないようにするシステムとか、二人乗りしてもそれに応じてブレーキの制御か変わるとか、そんな乗り手がなんとかすれば済みそうなものはいらないので、その分つけてもらいたかった。結局1000XTにつけていたデイトナのグリップヒーター巻きタイプを再装着する。次回マイナーチェンジでインパネのカラー化と合わせてきっと装備されるだろう。←2024/2時点、していない。

この手のバイクで最もコメントが多い「シートが高い」は、幸い身長175pと、850oのシート高に対しギリギリ「なんとかなりそう」と思える最低ラインにいると思っているが、もちろん跨ったままで後ろに下がるとか、凸凹道での足つきに不安が無いわけではない。雑誌やWebでは脚をピンと伸ばした状態での足つき写真を掲載しているが、いきなりあんなにピンと伸ばそうと思って足を出さないよ普通。しかもツーリング先で平らで砂利も落ちていない場所なんて結構少ないものだ。毎度足つきに不安を感じてばかりでは乗るのも億劫になってしまうかもしれない。こればかりはご自身の体格と相談して検討してもらえればと思います。

重量は乗り手次第。ロードキングを経験するとネガにはならないが、リッター越えのこのカテゴリーのバイクでこの重さは当たり前になってきているのではないだろうか。とは言え狭まったタンクとシートは跨って上から見ると、一回り小さくなった印象とマスが集中された感があって、圧迫感は感じない。



《インプレッション》
Vストローム1000(以下Vスト1000または1000と略)と比較しつつのインプレ。最初に1000のインプレで挙げていた細かいところで気になったトコが1050になってどうなったかを記述します。

・ヘルメットホルダー無い。
→〇ヘルメットホルダーが左ミラーの根元に付きました。

・ミラーの形が軽自動車のようだ。
→〇少しトガッた感じの幾分カッコいい形になりました。

・キーが挿しにくい。隼でもそう感じていたのですがスズキのキーシリンダーって皆そうなのだろうか。
→〇挿しやすくなりました。邪魔していたキーの近くのシガーソケットが移設されたのが大きい。

・ガソリン入れると外に飛沫が飛びやすい形状。しかもこのタンク、一旦満タンにしても少し経つと油面が下がり、つぎ足してしばらくするとまた油面が下がると、本当に満タンにしようとするためには何度かつぎ足す必要があり、面倒。(タンク内の圧の関係?)
→△変わらずですが、最近完全に満タンにするのは面倒なのでやめています。

・シートが黄色なので汚れが目立ちやすい。また塗装もシールなので色褪せしそう。色褪せしたら結構みっともなくなるだろう。
→〇シートがグレーになったので前より汚れても目立たなくなるでしょう。デカールシールは三年経っても色褪せしなかったので、ワックスをかけていれば大丈夫だろう。

・タンク上面の形状が凸凹でプラスチック素材なので、タンクバックはつけにくそう。
→△今回も付かないです。というかタンクバック使わなくなりました。シートバックを使っています。

・そうだろうなと思っていたけど、リアキャリアはアルミではなく、アルミ塗装のプラスチック。割れたりしないだろうな…。
→△今回もアルミ塗装のプラスチックかと。割れはしませんでしたけど。

7項目の「気になった細かいトコ」のうち、4つが1050で改善されました。



SDMS(スズキドライブモードセレクター)」について
1050から3つのドライブモードを選択できるようになった。「慣らしのうちはBかCモードで乗ってください」とディーラーに言われ素直にそうしていたが、900q超えたところでAモードを試す。4000rpmまでは1000の方がピックアップが良いと思うが、そこから上は1050Aモードの方が元気が良い。下もすぐにクワッと4000rpmまで行くのでそん色はない。つまりはAにすれば1000より加速性は良いと言える。

隼乗っていた時はこのドライブモードって分けて乗る機会もなくAに入れっぱなしだったが、VstAモード=高速で気持ちの良い加速を楽しみたい&峠で気合入れて走りたい。 Bモード=ツーリングで坦々と走る&峠でまあまあのペースで走る。 Cモード=高速で一定のペースで流す、もしくは制限速度以下で流れる車の列の後ろに並んで走らざるを得ない状況の時 と、多少区分けは付きそうである。

速さ・加速感で順番で言うと・・・

Aモード 1000でちょっと物足りなかった高速域のダルさが解消。1000に乗っていた人ならニヤリとするかも。
1000の単体モード 4000rpmまではAより元気。
Bモード インプレでこのモードは1000と同等と書かれていたが、低速のトルク感は1000より細い。
Cモード 速さ、加速を求める時は使わない。豪雨時の二人乗りとか、ガス欠寸前、追い越せないノロノロ運転ハマり状態なら使うかも。

とにかくあって楽しい機構である。Bモードを私は一番使うと思う。後述するが、Aモードは面白いけどもう少し熟成の余地がある気がする。



《一般路》
1000と比較してやはり2000rpmあたりの出足の薄さを感じてしまうが、平らな道はまあそれなりに坦々と進んでいく感じ。但し上り坂になると1000ではどのギアでも開ければついてきた感じだが、1050ではBモードだとトルクが効いてくる域まで上がるのにダルさを感じる。ギアを一段落とせばいいのだがVストはそうしなくて済むのが取柄の低速トルクの太さがあったので、そこはちょっと残念。Aモードにしておくと、今度は吹け上りが良すぎて前方を走る車をせっついてしまいそうになり落ち着かない。やや流れている上り一般道。ここだけは怠けずにちゃんとギアを選択し最適な回転数を維持する必要がある。

街中は変わらずの930oのハンドル幅はすり抜けには少し気を使う。微妙な間隔の場合は下手にミラーをかすめてトラブルにならないよう大人しく車の後ろにつくことも多い。あまり渋滞した街中を積極的に走るつもりはないが、ツーリング帰りはいやが上にも走らざるを得ないので苦痛である。

1000に続きローRPMアシスト採用。これ、Uターンや渋滞時の微速前進など使い勝手が良いのだが、1050になって少しその介入が抑えられたような気がする。少しオーバーにアシストしていたものをもう少し自然にサポートしているような感じ。逆にアシストされているのかいないのかがはっきりわからずで、1000の方が分かりやすくはあった。この間、坂道のUターンでエンストで倒しそうになったが、ローRPMアシストが粘ってくれて倒さずに済んだ。ありがとうローRPMアシスト。



《高速》

フロントシールドを最も高い位置にすると風がヘルメットの上を抜けていく。(当方身長175p)腕は二の腕辺りから風が当たる。サイズが小さくなったハンドガードだが、小さいながらも形状がそうさせるのか風を上手に避けてくれる。ハーレーのロードキングはあんなにでかいシールドにもかかわらず腹部辺りでの風の吹き上がりが生じたし、R1150 GS は風切り音が大きいしと、一昔前のバイクはどれも風対策に対してもう一つな所があったが、この時代は流石にそういうこともなく快適。試しにシールドから少し手を出してみればどれだけ強い風から守られているわかるだろう。風切り音はほぼ無く、風の巻き込みもなく、雨が降ってきても走っている間は濡れるのは腕だけ。脚も胴体もシールドから弾かれた水滴が少しだけ付くのみ。シールドの働きは1000に引き続き不満はない。

そして何と言っても今回私が注目する変更点、クルージングコントロール。楽である(笑)。高速道路なんてホントにアクセル開けて「行け−」なんて遊ぶのは全体の1割くらいで、あとは制限速度+αで坦々と走ることが多いのだが、これ丸ごとクルコンかけてしまう。最近は信号が無く延々と続く一般道路でも使っている。ハンドルを捻る必要がない分もう少し上体を立たせられるので、更にリラックスして乗れるようになるが、眠くもなる。新東名高速など120q/h区間が増えだしてきているが、当然ながらそんな区間でも何の苦労もなく余裕をもって流れをリードできる。

そしてもう一つのお楽しみ、Aモードでの高回転域の吹け上り。1000では6000rpmを越えたあたりから1000tとは思えないほど鈍い速度上昇(まあ低速に振っているのでしょうがないのだが)にやや不満を感じていたわけだが、慣らしも終わり、そら行けっ!とアクセルを捻れば、67000rpmあたりのトルクを持った加速が気持ち良い。1000と比べれば明らかな伸びを感じる。120q/h時の回転数から理論的には最高速220230q/hくらいは行くだろうか。1000より10q/hくらいは上乗せされることになる。

Aモードはピックアップは良いのだが、回転が上がっていく途中でお尻と手にビビり感を感じる。これはVstらしくない。元気があるのは良いのだが、余裕を感じられず、吹け上り方にもう少し調整の余地がありそうな気がする。過去にこれと同じような印象を持ったバイクがあったなと思い起こせば、10年前に乗っていたBMWR1200GSだった。今後10年かけてAモードの吹け上りのフィーリングに磨きをかけ、ベンチマークであるBMWに並んでくださいスズキさん。



《峠》 
これまでのバイク人生で最も峠道を速く駆け抜けさせてくれたVスト1000。SSやかなりいじったネイキッドとも同等に走れ、上手くなったと錯覚させてくれるこのバイクのコーナーリングポテンシャルは1050でも継続を期待したのだが、雑誌やWebのインプレではサスがマイルドになったとか、意識づけしないとアンダーステアになるとか書かれていて不安だった。
慣らしを終えていつもの峠道に出向いたが、まあ前と変わらず気持ちよく駆けることができるかなと。このステージはAモード。高速ではシートにビビりが出るこのモードも峠では気持ちがコーナーリングに集中しているせいかあまり気にならず、むしろ攻めている(つもり)状態の一つの事象と捉える。リーンアウトでカーブに進入し、細かなカーブをクルックル回って楽しんでいます。




《未舗装路》 
田んぼの畦道程度であれば躊躇わず突っ込んでいけるポテンシャルはあるが、泥濘や拳大の石がゴロゴロころがっているような林道は結構てこずる。それなりに林道ツーや草モトクロスも経験している私であるが、当時のような体力、反射神経は低下しているのに、かつてより車重が100s以上重くなったバイクを扱うわけで、一度降られると立て直すのに苦労する。あの頃はコケるのを厭わなかった私だが、このバイクでそれは避けたい。Vスト1000と変わらず、荒れた林道はかなり慎重に走ることになり、あまり面白いものではない。



《燃費について》
慣らし時はリッター24qをマーク。前車の時は頑張っても23qが最高だったが、すでにそれをクリアしているのも満足している。慣らしが終わり定番ツーリングルートを2か所(高速道路―峠道―一般路が混ざったルート)を周ったが、1000と比べてリッターで平均1〜2q向上(2123q/L)しており、定常的に1000より燃費が良くなったと言って良いだろう。トラコンや電子制御スロットルの恩恵と思われる。また今後走りこんでエンジンもこなれてくれば、もう少し良くなっていくかもしれない。




《その他細かいところ》
〇良いところ
・ヘッドライト、ウィンカーともにLEDへ。消費電力も少なく、かつ、これで当面は電球換えとか無くなるだろう。
USBが側面に移動。キーが挿しやすくなった。
・エンジンガードがついて機能性とワイルド感が出た。
・セレクターの操作感は良好。使いやすい。
・スマホホルダがつけやすいアクセサリーバーがついた。
・エキゾーストノートが少し逞しくなった?

〇改善して欲しいところ
・ヘルメットホルダーがついたのは良いけど使い勝手が悪い。(つけにくい)
・ガソリン入れる時タンクキャップからキーを抜くことができない。
・ホイールが洗いにくい、泥とか取りにくい構造。
・液晶の時計表示が小さい。
・正面に回らないとスクリーンの高さ調整ができない。
・シガーソケットはリアより真ん中あたりにすることはできなかったのだろうか。
・セパレートシートになったのに、値段が1000のロングシートと変わりませんな。

 

《総括》
Vスト1000の下取り額を提示され、支払い残額を見てしばらく悩んだが、思い切って買い替えただけの恩恵はあったと感じる。クルコンは高速の走り方を大きく変え、メリハリのあるSDMSはステージに応じた選択の楽しさと結果(走りと燃費)を示してくれた。ややマンネリ化したツーリングに刺激と快適さを得られたことは追加金額分の価値があったと思っている。

そしてデザイン。1000が悪いデザインと言うわけではないのだが、1050のスポーティなルックスは冒険心(もうあまり冒険できないけど)をくすぐり、乗る前からちょっとしたワクワク感を与えてくれる。これってバイクにもっと乗りたくなる一つの要素だと思う。サービスエリアとかで他のバイクと並ぶとちょっと埋もれがちな1000に対し、1050は冒頭書いた“レトロな”ルックスとレースカラーで個性ある一台としてしっかり目立ってる。

一方でVスト1000のあの4000rpmまでのトルク感はやはり良かった。速さもあるがそれよりもアクセルを開けた時の加速感、気持ち良さ。これは間違いなく1050より1000に軍配をあげたい。
他にも

・シールドの高さが走りながらでもできた(ちょっと危険だけど)。1050はできない。
・シートの快適性。いつまで走ってもお尻が痛くならなかったが、10504時間走ったら(これもすごいけど)座り方を変えたくなる。
・防風の範囲。シールド幅とタンク幅で範囲が1000の方が広い。

を挙げることはできる。とは言え1000との比較での話であり、ひどい不満になるレベルではないし、1000にしても今の性能で大きな不満も無く、1050のデザイン次第ではクルコンやSDMSがあろうとも1000をそのまま乗っていたかもしれない。650の人がステップする際にデザインが同じで良いのなら大幅値引き中の1000も悪くない選択肢かと思う。(1050と同じデザインの650が出たら迷いそうだが)

いづれにせよ峠や高速もそこそこ速く走れ、長距離ツーリングを快適に航続距離も長く。そんなバイクを探している貴方なら何の改造もなく大方満足できる一台になると言っておきましょう。(責任は持てませんが(笑))

以上、取り急ぎ2000q走行時点でのインプレでした。今後また気が付いたところがあったら追記します。
読んでもらいありがとうございました。



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