《世界最強ツーリングバイクからの決別》
などと、たいそうなタイトルであるが、自称ツーリンガーである自分にとってR1200GSは最終到達点との思いで買ったバイクであり、
実際にこのバイクに大きな不満があったわけではない。
雨天でもほとんどカッパ知らずの防風、防雨性能(走っている時ね)、燃費は20km以上、ABS 積載量、国内であれば十分に余り
ある最高速度、加速性能、ガレた道も難なく走行・・・こう書いていても「何で手放したんだお前」と仲間から突っ込まれ、馬鹿にされ
るのもさもありなん。買い換えたバイクが隼であることで辛うじて許しもらえる有様。(ほっ)
GSを買った頃はこれに子供を乗せて北海道へキャンプに連れていくと目論んでいたが、実際は自分も子供もそんな余裕こいた
時間などなく、気が付けはあっという間に子供はデカくなり、この先も部活や友人付き合いでその機会に目途はつかない。
また、振り返ればGSで林道に行ったことなど5年で3回という事実。GSで林道走るのは少々かったるかった。。GSのページでも
書いたが、やはりこのバイクはロードモデルである。さらに通っていたディーラーが規模を縮小し、家から遠くの店1店になってしまった
のも痛い。
そして何よりGSは乗っていて「楽すぎて刺激がない」のだ。・・・・。 し・・・刺激・・やっぱアホですか私。
かつて蒸気機関車の振動や音にいたく感動し、「もはや俺はスピードではなく乗り味に生きる」とスポスタ、ローキンと進めてきたが、
やはりスピードに物足らずR1200GSへと方針転換、そのまま5年間乗り続けてきたが、今度は「刺激が無い」とホザくオヤジは
ついに世界最強のツーリングバイクから決別し振り出しに戻ったのである。
《隼かZX-14Rか》
刺激と言えばレーサーレプリカである。そしてこのジャンルは30年というバイク人生の中で一度も触れたことがない世界である。
これじゃこれじゃとGSX−RやYZF-R1を調べまくったのだが、フト顔を出すツーリンガーの性(さが)。「北海道は無理でも信州
2泊3日くらいなら子供とキャンプツーリングできるのではないか。それでレプリカじゃ子供は辛いかな」そして何より金銭面を支配
する山の神のレプリカの印象=峠道行ったり来たりじゃあんたは飽きて一年持たない・・・・。過去にスポスタ乗るのを山の神が制止
したが、振り切って買った挙句一年で買い替えるという愚挙を犯した過去もあり、第三者的視点は無視できない。
刺激では一歩譲るがスーパースポーツならどうか。候補は隼とZX−14R。どちらにするか、多くの諸兄も同じように悩んでいることは
Webを見れば一目瞭然である。私は両車をMAXで引き出すスキルはないのでゼロヨンだの最高速などで差が出る領域に判断材料
はない。ツーリンガーがちょっと冒険したい「刺激」は両車とも十分に与えてくれることは容易に想像がつくし、ツーリングという視点でも
一定の満足は期待できそうである。こうなると長年バイクに乗ってきてのセコくて、いじましくて、面倒なことを減らしたいというバイク
の細かいとこや取り巻く環境で判断することになる。
例えば・・・
●センタースタンドはあるか(洗車・メンテで楽な方が良い)→ZX−14R
●小物入れはあるか(盗難防止で大型のチェーンロックを随時携帯したい)→隼の方が大きい
●燃費は良いに越したことはない→隼
●車幅(家の車庫スペースが狭いので車幅が無い方が止めやすい)→隼。数センチ差だがこの数センチが我が家はデカい。
●販売されてから年月が経っているか(不具合があらかた解消され、且つ長く売れているということは間違いが無い)→隼
●カラーバリエーションが多いか(ツーリング先でバイクがかぶっても色が違うと「同じバイクだらけ」感が軽減される。)→隼
●前傾がきつい方(なしえなかったレーサーレプリカ購入の片鱗を味わいたい(変態・マゾ))→隼
●家からバイク以外で行きやすいのはカワサキかスズキか(一年点検や車検で楽に店を行き来したい)→スズキ(隼)
●デザインがカッコいい→両車ともいいね
●車体価格→値引き交渉と下取り査定によるので判断できず。メーカー希望価格は国内隼ならリード
ここまででは隼がリード、更に私はこれまで二十数台のバイクに乗ってきたが、隼になったら初めてのスズキ車となり、色んな
バイク(メーカー)に乗る経験を増やしてくれることも期待していた。
ひとまずR1200GSの査定とまたがった時のビビッと感を確かめに行こうと最初はスズキのお店へ。
2014年度からハヤブサはフルスペックで国内販売が行われていたが、ネックは180q/hでリミッターが作動することと、色が
3色あるうち黒しか興味がわかず、恐らくは皆が黒を買うであろうし、納車が遅くなる可能性があること。
リミッターはスタッフに聞くと解除にかなり費用がかかり、逆輸入車より高くなる可能性があるらしい。チト予算オーバーになる気配。
一方逆車だと白がある。これが何となく仮面ライダーのサイクロン号を想像させ、そのリアル世代の私には悪くない印象。在庫も有る。
店にある隼にまたがると思ったよりコンパクト。Webでは「大きい」「取り回しが重たい」という声があったが、ローキンとR1200GSを
経験した身にとってはそうでもなかった。これならスンナリと乗れそう。しかも前傾具合にワクワクした。
このまま隼で良いかと思ったが、R1200GSの査定が予想と15万円程度開きがあり(いつもそう。市場は厳しいね)カワサキに
行ってから判断するかと思い店を去ろうとする間際、ちょっとした話から私の子供と店長の子供が同じ小学校に通っている事が
わかり事態は大きく動いた。共通の知人(父友)もスルスル出始めた頃から「もはやこの店にするしかない」と思い始めた。店長も
店長で下取り査定を○万円アップしてくれた。お互い身の内が分かれば「信用」も芽生えてくるものだ。そんなこともあり隼に決定した。
隼とZX−14Rで悩んでいたら、自分のいつもの細かい使い勝手と取り巻くバイク環境の視点で決めても良いのではないだろうか。
ご参考になれば。
《インプレッション》(12,000q走って)
午前4時、暗闇の中キーを回すとコックピットが一斉に灯を放ち、針がマックスまで踊る。ちょっとした高揚感。セルを回せば静かだが
重厚なアイドリング音が耳に心地よい。。近所の手前早速ギアを落とし、道に躍り出る。バックミラーで後続車が無いことを確認し、暖機を兼ねて
極低速で走り出す。隼は20km/h以下でも安定し、しばらくはそのままゆっくりと泳ぐ。ギアは既に4速、滑らかに粘るフィーリングに
包まれて徐々に速度を上げていく。6速2000rpm60km/h。このあたりで流すのが実は高速より気持ちが良いと思っている。
車のライトがバックミラーに映る。水温計が動き始めているのを確認し6速のままアクセルを僅かに回せば、振動もなく、排気音が
大げさに変わることもなく、風景だけが線となっていく。とは言えまだ4000rpm程度。能力の1/3も使っていないが警察のやっかいには
なりたくないのでアクセルを戻しクラッチを切って空走する。風の切る音だけが聞こえる中、空気抵抗を極力減らす形状はいつまでも速度が落ちない。
1300ccであっても燃費が20km/L行くのはこのあたりが所以だろうか。
●高速
高速ICに入る。本線への流入は隼にとって面白いところ。恐らく1秒程度で本線の流れに同調し、その1秒後には右車線の流れを捉え、さらに
1秒後には追い越し車線上の前方車両が道を譲ってくれる。その先どうするかは諸兄の判断によるが、譲ってもらった以上はスパッと
抜くのが俺は礼儀と思っている。ダラダラ抜くのは粋じゃない。譲った側に「これ(このバイク)に道を譲ったのは止む無し」と思わせる加速を
見せる事が出来れば良い。隼はそれができるバイクである。
燃費を良くしようと左車線ばかりを走っているより、右車線の流れに同調してで走っていた方が燃費は伸びる。24q/Lはいく。
走行風を嫌い、ツーリングスクリーンを付けたが、もしあなたが隼の限界まで挑戦しようとするならノーマルの方が良い。高々速域ではハンド
リングに影響する。そうじゃないのであれば付けた方が楽である。
●峠
全行程250q、その内180kmは峠道のルート(秩父‐雁坂‐奥多摩)を飽きもせずに月1くらいのペースで朝駆けしている。8割の気合で走る。
その速さで追いついてきた奴とは競わず道を譲るスタンス。
隼は正直重い。重く感じるのはしっかり体重移動ができていないからだが、低中速の折り返しが多いこのルートでは、最初は心がけていても
途中から疲れて怠けてしまう。峠を長く楽しむためにはスタミナと体のキレに自信がある奴が向いている。一方、怠けた走りであっても、隼は
グランツーリスモ的な見方もされているので、そこそこのペースで走っている分には「怠け感・ヘタレ感」は薄らいで見られる(だろう←逃げ口上)
大体3、4速ホールドで攻めるが、立ち上がってアクセルを気持ち多めに開ければあっという間に次のコーナーが近づいてくる。このルートは
ロータス・エリーゼが多く、低速コーナーはどうあがいても彼らの方が速い。しかし立ち上がりで差を一気に縮めることができる。バイク乗りは
コーナー速くてなんぼという感覚があるが、コーナリング捨てても立ち上がり重視の方が隼は宜しい。でも開けすぎはスリップするので注意。
一方高速コーナーは直線走っているのと何ら変わりない安定性を感じる。速度を途中から上げても、姿勢制御が確かであれば、挙動もなく路面を
グリップしつづける。限界を知っておきたいが、一般路ではあまりにリスクが高い。
完全ノーマルでジャケットに革パンレベルの装備であり、そもそも峠仕様のバイク&車野郎とはコンディションが違うので競うつもりもないが、
あまり抜かれないで走れるのは隼の能力のおかげである。
●街乗り
基本的に街中は苦痛なので走らないが、たまに用事で東京都心部に行かざるを得ないこともある。隼はハンドリング幅が狭く、且つ、ミラーが
たためるので、すり抜けはしやすい。また、前述の通り加速に優れているので車の間にズバズバ入り込み、すぐに抜けていくような走りが可能。
その際、4000rpm以上をキープしておいて欲しい。それ以下だと若干もたつく。
漫画キリンにもあったが、割り込んで車がブレーキを踏もうとした時にはもういない、というような機動的な走りはできる。まあそれが一番でき
たのはBuellだったが。
と、ここまで書いてきたがこれができるのはある程度流れがある時。完全渋滞+すり抜け不可になれば、たちまちエンジンからの熱気が脛や腿を襲う。
ヒートガードを買おうとしたが、なんかぼったくりの値段のため、コミネのクールマックスアンダーパンツ(PK−114)を購入。3,248円。
これで熱さはかなり軽減され、ヒートガード購入はやめた。
●ツーリング一般路、その他
高速バイクに思われがちだが、車と一緒のペースでもそれなりに楽しく走れる。SSとかドカ、KTMでよく言われるバイクがせかしてくる感は無い。
が、前傾がキツイ。峠では夢中で走っているので気にならないが、のんびりペースになった途端、姿勢に意識が行ってしまいキツイ。
二律背反ではあるのだが、ハンドルの高さが変えられるように車両法?が変わらないだろうか。対処法としてはスペーサーと片手運転+指先で
アクセルを充てることで上体を立てて走っている。
足つきは良い方であるが、砂利の駐車場で下り傾斜した場所に頭から突っ込むと、車重で出発する時にまたがったままでは後ろに下がれない。
大変かっこ悪いので注意したい。
タンデムはしやすいシート形状だ。700q程度のツーリングに出かけたが、タンデマーからは不満は出ていない。
収納はこの手のバイクにしてはある方か(DAEGには負けるが)。ペットボトル3本くらいの空間がある。しかしこれでは足りず、リアシート
バックを使用。
スイッチ類は特に不満無し。クラッチ、ブレーキレバーはやや遠く感じる。握りは軽くはなく、帰りに渋滞に遭うとツライ(当方握力50kg)
●燃費
高速道路右車線の流れ同調・・・24q/L
下道ツーリング・・・19km/L
街乗り・・・17km/L
平均は18〜19km/L
このクラスとしては良い方だ。
デビューして十数年、プロライダーを含め多くの隼インプレが存在する中で、今更素人ライダーのインプレがどこまで役に立つかわからないが、
小生の感じたまで。以上。
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